第64回春季応用物理学会にてシンポジウム「長期保管メモリのための高信頼配線技術」が開催

2017-05-13

2017年3月15日第64回応用物理学会春季学術講演会にてシンポジウム「長期保管メモリのための高信頼配線技術」が開催されました。

【開催報告】

世話人 上野 和良、小林 敏夫(芝浦工業大学)

本シンポジウムは、半導体分科内シンポジウムとして、応用物理学会春季学術講演会2日目の3月15日の午後に開催されました。本シンポジウムの目的は、現代の電子情報社会に内在する危機、すなわちデジタルデータの長期保管の困難性について紹介し、問題解決のための技術の研究開発の方向性を示すこと、そして具体的な技術開発例の紹介です。

初めに世話人の芝浦工業大学 上野より、背景説明、現状での活動としてのCRESTプロジェクトの紹介がされました。長期保管の問題解決に半導体技術が寄与できるが、その際に最も重要なのが配線、パッドの技術であり、現在想定される技術検討の方向性は以下の3つであるとの指摘がされました。

つづいて、同じく世話人の芝浦工業大学 小林より、現代の電子情報社会の記憶の保管の危機の根源についてと、長期保管に問題に苦しむ人々、組織についての紹介と、問題解決へ向けての半導体技術の役割、特に配線技術の重要性について示されました。また、超長期保管を妥当なコストで実現できた場合の経済的な効果につても考察が示されました。

その後技術検討、研究開発例が紹介されました。

最初の技術講演は、芝浦工業大学の野田和彦教授より、電気化学を基礎とする金属腐食の機構、腐食測定技術が紹介されました。また、微細領域での腐食測定の難しさについても指摘がなされ、微少測定可能なQCM法や大気腐食に適用可能な電位測定法が紹介されました。

次に山梨大学 近藤英一教授より、エリプソメトリ技術の紹介、その可能性についての紹介があり、清浄表面に極めて低い被覆率で異物質が付着した場合でも、十分な感度で表面状態の変化を観測できることが示されました。

休憩を挟んで、次に電気通信大学の横川慎二准教授より信頼性評価の基礎、特に技術完成度が低い製品の信頼性評価方法について紹介があり、従来の信頼性評価理論の下で100年を超える信頼性評価が十分に可能であることが指摘されました。

つづいて、ソシオネクストの松山英也氏より長期保管における配線信頼性の最も重要な故障要因はストレスマイグレーションであるとの指摘がなされ、常温12年におよぶ銅配線の応力変動の測定結果から銅配線のストレスマイグレーションメカニズムについて考察し、ストレスマイグレーションの対策について提案をおこないました。

つづいて、筑波大学 岡田晋教授より、新たな高信頼配線技術として期待される、銅配線をグラフェンあるいはh-BNといった原子層物質で包んだ構造において、原子層状物質のパッシベーション能力について第一次原理計算結果が報告されました。理想的なグラフェン膜には十分は腐食防止効果あり、グラフェンに欠陥があった場合でも小さければある程度の保護効果があることが示されました。また、銅配線をグラフェンあるいはh-BNで包んだ場合、銅表面の酸化による抵抗上昇を防いて、微細配線でも導電率を維持できる効果があることが示されました。

つづいて、東北大学 小池淳一教授より既存銅配線技術の更なる微細化、高信頼化に寄与する、拡散バリア性を持つ非晶質Co合金単層ライナー層形成技術とそのライナー膜の評価結果が報告され、有望であることが示されました。

つづいて、東京大学 霜垣研究室の金泰雄氏から既存銅配線技術の更なる微細化、高信頼化に寄与する極薄 PVD-Co(W)単層バリア/ライナー製法プロセス検討と特性評価結果について報告され、最適W濃度が明らかにされました。

最後に、芝浦工業大学 上野和良教授より、新配線技術としてのグラフェンで包まれた銅配線プロセス技術の基礎検討として、銅表面への低温グラフェンCVD技術の検討結果が報告されました。CVD炉内の温度領域を高温と低温の2領域を作り、前段の高温領域で原料エタノールを分解し、後段の低温領域でCVDを行うというものですが、まだ良質なグラフェン膜形成には至っていないことが報告されました。

なお、休憩前の前半の司会は電気通信大学の横川慎二准教授が、後半の司会は山梨大学の近藤英一教授が行われました。

 

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